バンカーは一度はまるとなかなか抜けられないみたい
2007-07-12


金融腐蝕列島「呪縛」を読みました。

金融腐蝕列島と銀行告発を読み[LINK]、この手の小説にちょっとはまり中。と言いつつ内容がしっかり分かっているわけではないですが。
また小説の方を読んだ後に、映画のDVDも鑑賞しました。

小説の方からいきますと、合併銀行ACBに勤務する北野。彼は同銀行の最高権力者である佐々木の娘婿に当たる。親の引き立てがあってのことか、ミドルクラスではエース格扱いとなるが、当の北野はそれを思わしくないと、積極的に距離を置いていた。
そんな折、不正融資事件絡みで銀行本社に東京地検の家宅捜査が入り、それを機にACBが未曾有の危機に飲み込まれていく―

という第一勧銀の総会屋への利益供与事件がモチーフとなった、あまりにも有名な作品です。
合併銀行故の下らない旧行意識、ボードの責任逃れ、そして元会長の自殺と、ほとんどそのまんまだそうです。第一勧銀の方は詳しくは知らんのですが・・・
第一作の「金融腐蝕列島」は、どうも話がまとまらずに終わっていると言うか続く事を前提としているようですが、「呪縛」の方は上下巻できっちりまとまっていますので、単品でお楽しみいただけます。

さてこの作品は映画にもなっていまして、どっちかというと映画の方が有名じゃないですかね。
スタンスとしては、金融腐蝕列島「呪縛」をなぞってはいるのですが、ディテールは異なっています。
原作は、主人公・北野の視点が主なのですが、映画だとそれに加えて bloomberg[LINK](実際の会社名で登場)の女性キャスターなどの視点も追加されています。
監督の話によると、原作に加えて銀行、というよりは日本の会社全体に蔓延る男女雇用の不均等を盛り込んでいるそうですね。先の女性キャスターや、ACB新体制の顧問弁護士団のトップが女性であるなど、重要ポストに積極的に女性をキャスティングすることでアピールしているとのことです。
後述しますが、原作とは結構違う点が多いですね。

この映画のキャッチコピーに「読んでから観るか、観てから読むか」みたいなのがありましたが、私は原作を読んでからの方をおすすめします。
2時間映画ですが、要所要所をつまみ食いで詰め込んだ感は否めず、しかもオリジナルキャラクターまで盛り込んでいるので、映画だけだと話がよく分からないかと思います。DKBの話を知っていれば違うでしょうが、まったくまっさらな状態では、置いてきぼり感が強いでしょう。
それよりは、原作を読んでストーリーの仔細を一度頭に入れた状態で映画を観た方が、原作との違いを楽しみ、また役者の好演を堪能できます。

その原作との相違についてですが、大まかな幹は同じですが枝葉はかなり異なりますね。
原作には無いキャラクタはもちろん、元会長久山の決断の場所が違ったり、MOF担片山が北野の後輩然としていたり、石井が襲われたり。あまり言うとネタバレになっちゃいますが。
決定的な違いとしては、「千久」が出てこないことです。
原作でこれ以上ないという位に物語の動機ともなるべきポジションが無いのはかなり大きな違いです。これによって最高権力者である佐々木の行動がいまいち説明できなかったと感じてしまいます。
これも2時間に収めなければならない監督の苦悩とも言えるでしょう。
だからこそ原作は先に読んだほうが良いと思います。逆に、原作を読んでいても映画は十二分に楽しめます。いずれにせよ原作は避けて通れないです。

キャスティングはかなり豪華ですね。

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[本]

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