放射性医薬品によるがん性疼痛緩和
2007-05-01


【医薬品第二部会】β線で癌の疼痛を緩和‐新しい放射性医薬品を了承[LINK]薬事日報[LINK]さま)へtb。

放射性医薬品による骨がんの疼痛緩和です。

がんはある程度経過すると浸潤や転移します。転移は主に血液やリンパ液を介して行われますが、血流に乗って骨にもがんは転移します。骨転移です。
原発巣が肺、前立腺、乳房の場合には、特に骨転移しやすいそうです。

骨は骨吸収と骨形成を絶えず行い再構築(リモデリング)によってその形態を維持しています。今ある自分の骨は、壊すのと造るのがバランスしているから維持されているという事ですね。このバランスが崩れると骨粗しょう症などになります。
骨の維持に欠かせないのは、もちろんカルシウム。私も毎日錠剤飲んでます。なかなかくっつかないけど。
そのほかリン、VitaminDなど様々な栄養素が必要です。

骨転移したがんは、骨の神経に存在する痛覚受容器を刺激したり、大きくなったがんが神経そのものや血管を圧迫したり、またがんに対抗するための免疫応答により、さまざまな発痛物質が遊離したりして、疼痛となるそうです。

そこで登場するのが放射性医薬品。塩化ストロンチウム(89SrCl2)。
ストロンチウムはカルシウムと同じ第二族元素・アルカリ土類金属。カルシウムに似た挙動を示すという事で、静注などで投与すると、骨に集積する性質があります。

ストロンチウムの安定同位体は、原子量88ですが、それより一つ多い89Srはβ崩壊によりベータ粒子(=電子)を放出し、自身は89Y(イットリウム)となります。

89Sr → 89Y + e- (+反ニュートリノ)

この電子線によって、がん細胞を照射死滅させる事が疼痛効果の発現だと考えられている模様。詳細は確定していないそうです。
同時に、転移部位には免疫応答によってリンパ球が集まりますが、これも障害を受ける事で、発痛物質の遊離を阻害する事も作用機序の一つと考えられているそうです。
疼痛緩和というとモルヒネなどのオピオイド系麻薬性鎮痛薬が頭に浮かびますが、これらとは一線を画した作用機序ですね。
その本質は抗がん作用による体積減少と言えそうで、純然たる鎮痛薬、とも少々違いそうです。

モルヒネでコントロール出来ない疼痛にも奏効するということで、期待できますね。
反面、疑問もあります。
電子照射がそもそもの作用機序と思われますが、同時にDNA損傷も起こしているでしょう。そのバランスは大丈夫なのか不安です。
骨転移部は代謝が促進されているので、ストロンチウムは優先的にがん細胞が存在する部位に集積するとは思いますが、通常の部位にも分布はしています。
そもそも抗がん剤の類は"諸刃の剣"ですので、十分な注意が必要です。まして放射性医薬品ですから、なおのこと神経質になってしまいますね。
注射剤なので患者さんがご自分で服用、という事はまだないとは思いますが・・・
また放射性医薬品という事で、患者さんへの服薬指導も入念且つ慎重になりそうです。
「核アレルギー」は確かに存在します。

[医療]

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