サリドマイドの新たな可能性
2006-08-09


販売停止のサリドマイド、がん治療で承認申請[LINK]
(by 読売新聞[LINK]さま)

サリドマイド[LINK]といえば、昔睡眠薬として主に妊婦の方が繁用したががために、その催奇形性によりたくさんの奇形児被害が生じた医薬品ではあります。
その催奇形性については、サリドマイド自体がラセミ体であり、そのS体に催奇形性があるという事です。
なので、理論的には光学分割などでR体のみにすれば催奇形性は無くなる、と安直に考えてしまいますが、Wikipediaの情報では体内でR体がS体に容易に変換する、おそらくは簡単にラセミ化してしまうのだと思います。
そう考えると、安全性については慎重にならざるを得ないです。
カルボニルα位の水素だから簡単にエノール化して光学活性もすぐに失われそうですが・・・胃酸中ならなおさら。ここを別の置換基に変えておけば、結構簡単にラセミ化は防げそう。でも生理活性に大きく影響するかも・・・。

そんな忌まわしき記憶のあるサリドマイドですが、どうもがん治療に用いられるとのこと。
この情報自体は結構前からありましたが、とうとう承認か?、と言ったところです。
サリドマイドには血管新生阻害作用があり、それががんの増殖を抑制すると言う事です。奇しくも催奇形性発現とほぼ同じ作用機序によって、新たな道を歩む事になろうとは。
今度は同じ過ちを絶対に起こさないようにしなければなりません。

薬害[LINK]は絶対にあってはならないことなのですが、それでも起こってしまっています。
未知の相互作用による予想が困難なものから、薬害エイズのように防ごうと思えば防げた人災まで。
これらを教訓に二度と薬害を起こさない事が、医療の担い手に課された使命です。

まずは、サリドマイドの適正使用が円滑になされる事を望みます。

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